イラストレーターとして2016年から毎月広報たまちいきにA3サイズのイラストマップを連載してきた。
1年目はとにかく一生懸命、晴れて2年目に突入できれば「そこからが勝負」、3年目は「さらに丁寧に、手を抜かず」、それ以降は読者に飽きさせず、自分自身が楽しみながら続けられるようにと恩師である永沢まこと氏は見守ってくれた。100号で連載終了の話をすると、本当に凄いよ、よく頑張ったねと褒めてもらえた。
何もわからないわたしに依頼してくれた多摩信用金庫さんがわたし目線の制作を尊重してくれたこともありがたかった。感謝の極みであった。
連載のお陰でさまざまなメディアのお仕事に波及していった。コロナ前後のあたりはとても目まぐるしく仕事をすることができた。
そのうちコロナがはじまって、なんとなく気分がおちこんだ。朝の景色が憂うつで仕方なかった。
「これ、冗談だったらいいなぁ」と。
けれど日々ネガティブなニュースばかり(当時は豪華客船内での感染)が垂れ流され、嫌でも情報が耳にはいってきた。2021年頃からイラストの仕事も徐々に少なくなってきていた。
ただ、コロナを予言してか否かある方の助言もあって2019年から、アクリル絵の具で作品制作をはじめていた。
慣れない画材に戸惑い、悩むことが益々増え
「アーティストってなに?」
「自分が表現したいことってなに?」
たちまち「?」に囲まれて、自分の目指す方向がわからなくなった。迷うよりも手を動かそう、なんでもやってみて、やりながら探そう、そう思いキャンバスとアクリル絵の具を買いあさり、動画で画材の使い方を学び、夢中になって作品をつくった。しかし頭のなかは一向に晴れず常に曇ったまま、完全に自分の線を見失った。楽しく野外で描いていた時、なぜあんなに楽しめたのか、なぜあれほど夢中になれたのか、あの頃の自分に聞きたかった。
そのうち、建設中のマンションの仮囲いをつかった市民参加型の多摩平の森アートプロジェクトへ運営側として参加してみないかというお話をいただいた。初めてプロジェクトに参加するという経験ができた。真っ白い仮囲いをキャンバスにh2m×w5mの作品を仕上げた。
新しい道が開けたようで、心が踊るような仕事だった。
それからご縁あって日野市南平にアトリエを構えることができ、壁画グッズも揃っていたので今度は真っ白な壁をキャンバスに壁一面にアフリカサバンナの景色を描きまくった。アフリカに行けないなら、その雰囲気を味わおうと。
その後も気がすむまで壁という壁に絵を描き、残された白い壁はあと一面だけになった。
その間、自主制作を続けた「わたし」は自分自身と向き合う作業を続けた。幼少期~思春期、大人へと成長していったわたしの周りであったこと、感じていたことを言語化しながら、自分の中に落とし込む作業を何度も繰り返した。
あまり興味はなかったけどアーティストとして生計をたてるためのマーケティングも学び、いまも現在進行形だ。
わたしが描きたいことって一体なんだろう、フワフワ、フワフワと何もない空間に浮遊し、何にも繋がれていない状態にいたとき永沢まこと氏の「絵を描く、ちょっと人生を変えてみる」を再読した。
「あぁ、なんてこと!」すでに永沢先生は絵描きとしての在り方を示していた。私は永沢まこと氏の言わんとする最も大切な原則を自分のなかに落とし込まず、楽しみながら描けてしまうことに満足し足元はふらふらしていた。氏の示す線をつかった具象表現は、絵を描きたいと思った人にとっての基礎であり、入口であり、真剣そのもの真っ正面から「絵を描く」ことに切り込んだ革新的な方法だった。「線」と「色」を見失ったことで、永沢まこと方式の丁寧で揺らがない力強さを知りました。そしてとってもユニークそのもの。
私は絵を描くことで、自分の線で、自己というものを表現し自分の線のなかに潜む「信念」をみつけている最中だった。
ようやく私は「自分の線」に出会えたような気がしている。それは、自分ではさがせなかったクリエーター・美術家のための起業塾 MUNI Lab.の仲間の声によって。
わたしは「私の線」を持てていたようだ。
いま次のステップにすすむための準備をしている。
暗い宇宙空間で空回りし、悶々とする日々のなかにいたからこそ、解決の糸口、抜け出すための入口に気がつくことができた。
物事がうまくいかない、どうも歯車が噛み合わない、そんなときも短い人生を過ごす中であった方がいいのかもしれない。ようやくそう思えてきた
アインシュタインのいう
「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう。
Common sense is the collection of prejudices acquired by age 18.」
あるときはドンッと前へ背中を押され、あるときは立ち止まってじっくり考える。
目の前にやることが山積しており
相も変わらず混乱の最中
「現状維持は後退の始まり 松下幸之助」
永沢まこと氏から譲り受けた「線」の極意を武器に
自分というものを表現し続けようと思う。
そして絵を描いてみたいと思う人たちに向け
これまでの経験をもとに
この方法論にようやく気がついた経緯を
伝えていけたらと思う。
clip ENDO Chie